里財小説・「Sweet Season」・第二話w

「Sweet Season」#2「隠しきれない想い」
ガチャ。家のドアを開けた。
妻の杏子が走ってきた。
「あなた、お帰りなさ~いwあらぁ、今日はずいぶん早いのね?」
「あ・・・あぁ、ちょっと疲れてるから、早めに帰ったんだ。」
「あら、そう。大丈夫?体壊したりなんかしないでよ、あなたには早く教授になってもらわないといけないんだからw」
と言うと、また走って部屋に入っていった。
杏子は、無関心というのか、素っ気無いというのか、俺がケイ子と浮気しているのも、おそらく気付いているのだろうが、深くは聞いてこない。こういう点では、楽な女だ。ただ、俺が教授になることだけを望んでいるらしかった。
俺は、その夜は、すぐにベッドへ入った。なぜだか、食欲は起こらなかったからだ。しかし、寝付けるはずがなかった。―さっきの里見との会話ばかりが頭に浮かんでくる―。里見がどうしたっていうんだ?でも、その時の胸の高鳴りだけは、自分でも分かった。―間違いなく、俺はその時から、里見に恋していたんだ―。
そして、全く寝付けないまま、俺は朝を迎えた。そして、杏子の前では、いつもと変わらぬ夫を演じ、いつもと変わらぬように出勤した。
すると、また後ろから近づいてくる足音を感じた。俺の胸の鼓動が一気に高鳴るのが分かった。―里見かもしれない―。そんな思いが俺の脳裏を掠めた。どんな顔して、里見に話しかければいいんだよ?その時、間違いなく俺の顔は赤くなっていた。しかし、心の準備も出来ないまま、無常にも里見は俺に話しかけてきたのだった。
「やぁ、財前。昨日はすまなかったな―。今日なら、飲みに行けるよ、もう、三千代にも話してあるんだ、今日は財前と飲みに行くって―。今日でいいかい、財前?」
「あぁ、もちろん―。俺こそ、昨日はすまなかった、里見。変なこと言って、君を困らせたようだな―。」
俺は、里見の顔をまともに見ることができなかった。―里見の顔を見たら、いつもの俺じゃなくなっちゃうような気がして―。俺が、里見への愛情に気付き始めたのは、この頃からだっただろうか―?          
☆つづく☆


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